61_迷走パズル

演劇プロデューサーのピーター・ダルースは妻を亡くしてから酒浸りになり、とうとう入院加療の身となった。とある晩、ピーターは「ここから逃げろ。殺人が起こる」という自分の声を聞いてパニックに陥る。幻聴か? その話を聞いた療養所のレンツ所長は、少し前から院内に不穏なことが続発している、評判にも関わるので調べてくれと頼む。探偵役を務めることは社会復帰に向けて効果的との判断だ。かくて内偵を始めたところが美女と恋に落ち、折しも降りかかった殺人事件の容疑から彼女を救うべく奔走するピーター。今や事件解決と二人の退院は、切っても切れない至上命題だ!(東京創元社HPより)
パズルシリーズの1作目。お手ごろ価格で読めるまでに何年かかったことか。。。事件のとっかかりが突拍子もなさすぎるけど、登場人物をちゃんと動かしてストーリーが単調にならないように仕上げているのはさすがだ。動機だったりトリックだったりちょっとした弱点はあるものの、幻聴・幽霊の声などの伏線の張り方、証拠なんて脆弱でも気合とノリで犯人に罠を仕掛けてしまうクライマックス、一番の見せ場である最後の謎解きのダルースの詰めの甘さ加減などなど、ページ数が少ないながらも楽しむポイントがふんだんでサービス満点の内容となっている。時代的な部分でピンと来ないところはあるけれど、ここから始まるパズルシリーズの面白さの先駆け的な1作である。読んでおいて損はないし、これを読めばパズルシリーズが楽しみになること請け合い。
2012/6/20 asuka