59_アイ・コレクター

アイ・コレクター (ハヤカワ・ミステリ 1858)

アイ・コレクター (ハヤカワ・ミステリ 1858)

ベルリンを震撼させる連続殺人事件。その手口は共通していた。子供を誘拐して母親を殺し、設定した制限時間内に父親が探し出せなければその子供を殺す、というものだ。殺された子供が左目を抉り取られていたことから、犯人は“目の収集人”と呼ばれた。元ベルリン警察の交渉人で、今は新聞記者として活躍するツォルバッハは事件を追うが、犯人の罠にはまり、容疑者にされてしまう。特異な能力を持つ盲目の女性の協力を得て調査を進める彼の前に、やがて想像を絶する真相が! 様々な仕掛けを駆使して描く驚愕の傑作 (ハヤカワオンラインより)
エピローグから始まり、プロローグで終わる。ページが遡っていく不思議な仕掛け、軽快なテンポとめまぐるしく展開していくストーリー。そして、<つづく>のテロップがでてエンドロールな結末。なんて、ハリウッド的な作品なんでしょ。でも、それ以上でもそれ以下でもない。決してつまらないわけではないけれど、面白さに奥行きがない。読み応えはあるけど読みにくい。非常によいサスペンスに仕上がっているんだが、表面的に面白いだけで終わってしまっていて歯痒い感じなのだ。じゃあ、どこが悪いのかといえば、キャラクターは主人公の新聞記者も盲目の女性もちゃんと立っているし、ストーリーも適度にポイントがあってメリハリがついている、終盤にかけての緊張感の高まりとショートレンジの場面転換など動きもある、そして終わり方にもサプライズが用意されている。ということで、悪い点が見当たらない。小説として優等生過ぎることで、表面的な面白さで終わってしまっているのだ。いってしまえば平均点。なので、印象に残らない。ジェフリー・ディーバみたいな感じではあるが、なにかに突出していないのでディーバに追いついていない。褒めたいのか貶したいのか、感想までどっちつかずにしてしまう本作。ある意味、すごい本なのかもしれない。
2012/6/19 asuka