57_名探偵のキッシュをひとつ

名探偵のキッシュをひとつ (コージーブックス)

名探偵のキッシュをひとつ (コージーブックス)

老舗チーズ店の跡継ぎシャーロットは、香りだけで種類を見極めるチーズの達人。そんな彼女は、祖父母が築き上げた大切な店に磨きをかけるため、思い切って店舗をリニューアルすることに。そして迎えた新装開店当日。無料で村人たちを招き、チーズや特製キッシュ、シャンパンで最高のおもてなし。その味を絶賛され、パーティは大成功、と安心したのもつかのま。よりによって店の目の前で、いじわるな地主が殺される事件が起こり・・・!? あろうことか容疑者にされてしまった大好きな祖母を救うため、シャーロットは忙しい店の仕事のかたわら、犯人捜しに乗り出す。(表紙より)
コージーミステリなるものを初体験。ミステリとしてだけでなく、ほのぼのとした田舎の日常を楽しむのがいいのだろう。なんといっても、作中随所に登場するチーズ絡みの料理とレシピ。ヴァン・ダインやカーなどの作品で探偵が披露する薀蓄とは全く違った薀蓄を楽しむことができる。眉間に皺を寄せて、伏線だの推理の穴だのを見つける読み方ではなくて、紅茶を片手にクッキーをつまみながら物憂げな午後に読むのに最適だと思う。全体の雰囲気は女性らしさを感じるが、実はこういう作品は男性が読むべきなのではないだろうか。読んだあとパートナーにも勧めて、ミステリという共通話題にプラスして、チーズやワインなんかを楽しむ時間をつくるきっかけになると思うのである。ま、二人ともにガッツリ濃いミステリ読みには向かないかもしれないが。

2012/05/23 asuka