55_蝋人形館の殺人
- 作者: ジョン・ディクスン・カー,和爾桃子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2012/03/23
- メディア: 文庫
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本作も長らくポケミスが品切れになっていたせいで、なかなか読む機会に恵まれなかったバンコラン物。あとは『四つの兇器』だね。カーは、四の五の言わずに楽しんだモン勝ちです。独特の世界観といい、クセのある登場人物といい、掟破りの作者主張といい、すべてを受け入れるだけの心の余裕と作品を楽しもうとする前向きな姿勢。これが大事です。正直、本作だって蝋人形館である必要性は全くないわけで。中盤から終盤で繰り広げられるジェフ・マールの冒険なんて、見方によっちゃ、とんだ茶番ですよ。そんな叩いて、暴れて埃が濛々と立ち込めた中に、本格たる伏線が仕掛けられているわけです。バンコランが犯人を明かして、その理由を述べる段で、思わず「ズルイ!」って言いたくなるけど、でも確かにちゃんと前もって提示されていたことを思い出す、それもすんなりと思い出すことができるくらいにハッキリと書かれているんだ、これが(あぁ、憎たらしい・・・)。それを楽しむのが、本当のカーの楽しみ方だと信じて已まないのですよ。
それにしても、本作のバンコランとマールを見ていて、つくづく御手洗と石岡君だなぁと感じました。
2012/05/07 asuka