21_十三回忌

十三回忌 (ミステリー・リーグ)

十三回忌 (ミステリー・リーグ)

ある素封家一族の、当主の妻が不審死を遂げたが、警察はこれを自殺として捜査を打ち切ってしまう。それが始まりだった。当主の妻の一周忌には「円錐型のモニュメントに真上から突き刺さった少女」、三回忌には「木に括りつけられさらに首を切られた少女」、七回忌には「唇だけ切り取られた少女」・・・と忌まわしい殺人が続いていく。そして十三回忌を迎える。厳戒態勢のなか、やはり事件は起こった。(表紙より)

ババーンとインパクトのある派手なトリックは初期の島田荘司ばり。さすがは島田荘司と共著を上奏しているだけはある。一周忌の殺人と三回忌の殺人それぞれで、長編にしてしまってもおかしくないくらいのトリックではある。本作が作者の長編デビュー作ということで、ド派手な印象を持たせるためにすべてを詰め込んだ感じがする。登場人物を動かそうとして余分なエピソードを加えたのはマイナス点だと感じた。警察小説に徹して、桐野と湊のコンビ対地元の巨大権力一族にするか、名探偵海老原とワトソン役の県警笠木で、人間関係度外視のトリック解明探偵小説のどちらかにした方がよかった。その方がすっきりするし、本格ミステリの体裁を維持したままストーリーをくみ上げられたのではないかと思う。その辺がハッキリしなかった分、最終章の謎解きとナベツネとの対決が緩んだままになってしまったのだろう。また、トリック一本勝負の作品に求めるのも酷な注文ではあるが、広い敷地のお屋敷が舞台だったこともあり、もっと怪しい雰囲気を演出してほしかった。終始、館の外側で事が進んでいくので館内部を見ることができない。ギミック要素がいたるところに散らばっているのに、使わなかった勿体なさを強く感じてしまった。
各所の書評をみていると、「武家屋敷の殺人」はすこぶる面白いようなので、デビュー作である本作からの成長度合いを見るためにも、読んでおきたい作品である。ともあれ、ド派手なトリックを楽しみたい人は、本作で十分楽しめるので一読しても損はしない。

2012/04/17 asuka