54_裏返しの男

裏返しの男 (創元推理文庫)

裏返しの男 (創元推理文庫)

フランス・アルプスの村で、羊が狼にかみ殺される事件が相次いだ。のどに残された狼の噛み痕は、狼自体が大物であることを示していた。そして、羊と同じ大きな噛み痕を喉に残した牧場主の女性の死体が発見された。カナダ人のグリズリー研究家と村に暮らすカミーユは、女牧場主が死ぬ前に羊を殺したのが狼男だと話をしていたことで、事件に巻き込まれていく。かつての恋人カミーユをテレビのニュース画像で見つけたアダムスベルグ警視が現地に乗り込んで捜査を開始する。

ごめんなさい。6年前に読んだ「青チョークの男」の感想をケチョンケチョンに書いたことを後悔しています(http://d.hatena.ne.jp/asuka_project/20060515)。だって、アダムスベルグ警視のシリーズは、ミステリエッセンスが入った、アダムスベルグ恋物語だったんだ。前回は海洋学者のマチルドだったし、今回は奔放な配管工で元恋人のカミーユ。結局恋の行方は闇の中だけど、それはそれで読後に味わえる余韻でもあるわけだし。それにしても、本作は読み進めていく中で、いったいこの話はどこに着地するのかが見えてこなかった。主人公のカミーユが言っている"ロードムービー"のように、冒険譚が続いていく。平行してアダムスベルグが、とある女に命を狙われる話が挿入されている。そのふたつがどこで交差するのか、"ロードムービー"とどう関係しているのか。モヤモヤと読み進めていった結果、えっ!?そうなの、という感じで最後まで行き着いてしまう感じ。狼男の正体も、本当にそれでいいの?という感じ。確かに伏線を張っているけど、コイツじゃないかと思ってた人間が、ひねりもなくその通りだったりするから、ちょっと拍子抜けしてしまった。
あとがきで若竹七海が書いているように、このシリーズとヴァルガスについては、語らずに楽しめばいいのだ。

2012/04/03 asuka