52_火焔の鎖

火焔の鎖 (創元推理文庫)

火焔の鎖 (創元推理文庫)

2009年にキラ星のごとく現れて、現代英国本格の力をまざまざと見せ付けたジム・ケリーの第2作。
27年前にアメリカ空軍の輸送機が農場に墜落。この事故で九死に一生を得たマギーは、死んだ乗客の赤ん坊と自分の息子をすり替えていた。なぜ、我が子を手放したのか。時が経ち、マギーは真相をテープに残しこの世を去る。マギーの死と同じくして、少女失踪事件に始まり、不法入国者の不穏な動き、拷問死体の発見など、敏腕記者ドライデンの周りでは事件が目白押し。過去と現在を繋ぐ謎の連鎖の真実にドライデンは近づくことはできるのか。
1作目の「水時計」同様に、過去と現在の犯罪が絡み合い複雑になった謎を主人公のドライデンが解いていくスタイルに変化はない。前作のテーマが「水」だったのに対して、本作のテーマが「火」ということで、作中の沼沢地の雰囲気が一変している。ジム・ケリーの手にかかると、同じ町なのに、「青」のイメージが「橙」へと瞬時に変わるのはとても面白い。2作目ということで前作との比較になるのは、ある意味仕方のないことだが、本作は前作に比べ、テンポというかリズムが感じられなかった。赤ん坊のすり替え、少女失踪、不法入国者問題、そして殺人事件。欲張ってしまった結果、展開がスムーズではなくその必然性を途中見失ってしまったのは自分だけだろうか。点は点のまま事件全体に散らばっていて、線にならずに点をかき集めて行き着いた先が結論だったという印象を受けた。ジム・ケリーの作品自体悪くはないのだが、本作はなんとなく自分との相性が悪かったような気がした。

2012/2/28 asuka