45_ライノクス殺人事件

ライノクス殺人事件 (創元推理文庫)

ライノクス殺人事件 (創元推理文庫)

幻の名著復刊。
帯やあらすじに書かれている「結末に始まり発端に終わる」と言う趣向。先入観を持って読み始めても、なんら裏切られることはなく、ゲーム感覚的でかつ本格ミステリとしての読み応えはつりがくるくらいである。正直、ミステリ慣れした読者であれば、真相は最終章を待たずに看破できるのであろう。看破したとしても最後まで読ませるプロットと作品の組み立てのうまさには脱帽だ。最後まで読み終えたあとにもう一度、最初に戻って結末部分を読み直してしまいたくなるすばらしい手法を楽しんでほしい。また、第一部と第三部の章の終わりに作者のミニ解説が挿入されている。これが見事に謎解きにガイドとなっている。読み飛ばせない位置で挿入されており、状況の確認が容易に行える、にくい演出である。これだけ作者がお膳立てを整えてくれているのに、面白くないわけがない。1930年代を舞台にしているので、ちょっと古臭さを感じるが、そのレトロ感覚を堪能しながら上質の本格ミステリを味わってもらいたい。

2008/07/14 asuka