43_第七の女

第七の女 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1813)

第七の女 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1813)

パリの街を震撼させる、血の一週間。連続殺人鬼との死闘を描く、大型本格警察小説。
あらすじを読む限り、斬新さは感じられない。いわゆるサイコキラーと主人公のパリ司法警察局凶悪犯罪捜査班部長のニコ・シルスキーが繰り広げるサスペンス。そんなありきたりと言ってもいい小説のネタをどのように料理しているのかに注目して読んだ。結果はありきたりを脱しえず、平凡なサイコ物だった。
今後この司法警察局凶悪犯罪班を中心としたシリーズにしていく構想があるのなら、平凡ながらシリーズのスタート作としての価値はある。主人公のニコのキャラクターがかっきり書かれており、シリーズの中心人物として今後定着していくと思う。ただしニコを一生懸命書きすぎたせいか、彼を取り巻いている刑事たちや検察医などの、脇役達の存在が薄くなってしまっている。せっかくの警察小説の態を取っているにもかかわらず、組織内部の人間が動ききれていないので、地道な捜査でじわじわと真相が解明されていく緊張感がなくなってしまっているのだ。犯人が犯行を重ねていくたびに、意図的に手がかりを遺し犯人に近づいていく、サイコ物ではおなじみの展開。予想通りの定番の展開に、消化不良を感じはしないものの、読後の印象が薄い。期待しすぎた分、普通すぎたので評価は高くない。

2008/06/21 asuka