42_論理は右手に

論理は右手に (創元推理文庫)

論理は右手に (創元推理文庫)

「死者を起こせ」に続く三聖人シリーズの第2弾。とは言え、今回は三聖人の出番は少なめ。もっぱら新キャラクターのケルヴェレールが中心に物語りは進んでいく。このケルヴェレールが印象の強いキャラクターに仕上がっている。ペットはなんとヒキガエル。そのヒキガエルをポケットに入れて持ち歩く。そんな変人も、年齢や身体の不調ですでに引退しているが、元内務省調査員。極右に人間を張り込んでいたケルヴェレールが、街路樹の根元に落ちていた犬の糞から人骨を見つけ出すところから事件はスタートする。犬の糞から人骨いう状況から、殺人に結び付けるのは少々強引な感じは否めない。また、この糞の主(?)を海辺の片田舎に見つけ出し、その田舎で起きた老女の事故死にたどり着く。この奇天烈ぶりがヴァルガスらしくもある。
話の展開は迷路に迷い込むことなく、淡々と進んでいく印象を受ける。淡々としている分、読みやすいのだが、ミステリとして面白みが消されてしまっているのが残念だ。「死者を起こせ」の続編ということで、無意識に前作のあのガヤガヤしたなかでメリハリがあるストーリー展開を期待してしまっているので、ちょっと物足りなさを覚える。大きな展開を見せないプロットの中で、古いタイプライターや、村にそびえたつやたらと大きな占いマシーンなどギミックがちりばめていたのだから、もっと読者の意表をつく事件の結末に仕立て上げることもできたと思うのだが。
「死者を起こせ」は別格なのでそれを基準に考えた時、「青チョークの男」を読んだときにも感じたのは、ヴァルガスの作品への期待は少し差っぴいてあげないといけないのかもしれない。「死者を起こせ」を未読の読者がある意味羨ましい。

2008/06/13 asuka