33_ミステリ講座の殺人

ミステリ講座の殺人 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

ミステリ講座の殺人 (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)

タイトルからはメタミスのような話を想像していたが、オーソドックスな本格モノ。ちょっと拍子抜けな感も否めない。
それはさておき、本作ではC.デイリー.キングが用いた「手掛かり索引」が採用されている。それなりに伏線は貼られているものの、「手掛かり索引」としてまとめる程のものではないように感じた。逆に「手掛かりの索引」のためにとってつけた、不自然な伏線もいくつかあるのではないかとさえ思える。小細工をしなくてもストレートな本格モノに仕上がっているのだから、小説としての完成度を高めた方がよかったように感じる。原題は「The Affair of the Heavenly Voice」である。Heavenly Voiceは翻訳では「天の声」と呼ばれる鐘なのだが、どうもこの「天の声」を生かしきれていない。もっと肝心なトリックのひとつとして上手く生かせられなかったのか。それとも「天の声」だけではなく、殺害される秘書が死ぬ前に語っており、謎解きのキーワードとなる「ルスピアム」もHeavenly Voiceの一部だったのか。だとしてもやはり盛り上げ方にもうひと工夫欲しかった。
黄金期らしい作品ではあるが、それ以上でも以下でもない、平均点な作品だと思う。

2008/01/13 asuka