31_リヴァイアサン号殺人事件

リヴァイアサン号殺人事件―ファンドーリンの捜査ファイル

リヴァイアサン号殺人事件―ファンドーリンの捜査ファイル

パリ郊外の貴族の館でおこる大量殺人。妖しげな秘宝の謎。そして豪華客船に関係者全員集合。このすばらしいプロット。期待しないわけにはいかないではないか。さらにロシアンミステリという未踏の領域(分析官アナスタシアのシリーズを読んでいるので、未踏ではないのだが・・・)。
そんな期待を裏切ることなく、緻密なロジックでの犯人当てはかなりレベルも高い。ストーリーもだれることなく、いくつかの見せ場の配置も上手い。人物も手抜きなく書かれており、それぞれのキャラクターの役回りも不足がない。非常に上質なエンターテインメントミステリに仕上がっている。
視点がくるくると変わりながら物語が展開していくが、なにか意図があってのことかと思って読み進めていくものの、別段視点が変わることに意味はないようだ。視点がくるくると変わることでテンポが落ちることも、ストーリーが発散してしまうこともない。視点の切り替わりで人物の混乱を招きそうな感じもするが、意外とそれぞれの特性が生かされ逆にキャラクターを見極める手助けになっているかもしれない。この部分に関して言うと、この構成で誰もが成功するとは思えない。やはりある程度の力量が求められるであろう。
訳も悪くはないので、サクサクと読める。内容はオーソドックスだが、変り種のミステリを読みたい人は是非一読を。

2007/12/04 asuka