28_悪魔はすぐそこに

悪魔はすぐそこに (創元推理文庫)

悪魔はすぐそこに (創元推理文庫)

読んだ者しかわからない、このパズルゲームの面白さ。話は単純に見えるが、それが罠に陥る第一歩。殺人事件の原因ともいえる8年前の女学生の死。殺された教授が抱え込んでいた横領事件。名誉学長暗殺予告。そしてなんの変哲もないロマンス。この恵まれたプロットに幾重にも張りめぐらされた伏線。視点の移り変わりのタイミングといい、技巧派のディヴァインを堪能できる。やたらとアクションシーンの多い現代ミステリにはない、古き良きミステリに触れる幸せを喜びたい。
最終章で真実が語られ、伏線を上手く回収していく様を読み、「あれがそうだったんだ」と気付かされる。強引に事件を終結させるのではなく、読者を納得させたうえで結末をつける。これがミステリ黄金期で代表を張れる凄さなのだ。法月綸太郎のあとがきを読むと、再読してこの小説のもうひとつの顔が見えてくるらしい。
ディヴァインは、さらりと表層だけを読むのではなく、じっくりと味わって読んで欲しいミステリ作家である。

2007/10/30 asuka