12_女王国の城
- 作者: 有栖川有栖
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/09
- メディア: 単行本
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舞台は異星人を信仰する礼儀正しい新興宗教の本拠地。クローズドサークルで起こる連続殺人事件。警察の介入を許さない教団の監視化のもと、江上とアリスの推理が行き着く先はどこか。
ありそうでなさそうな舞台設定。ある意味特殊な設定ゆえの、序盤が説明調なのは仕方ないか。ひと通りの舞台セッティングが終わってからのストーリー展開は、強引なまでに読者を引きずり込んでいく。殺人事件で発生する「なぜ」だけでは物足りないとばかりに、「なぜ」を投げかけてくる。「なぜ」だけではなく、おかれた状況に翻弄されるEMCメンバー。そんなストレスフルなメンバーが爆発するサスペンス満載の中盤の展開。そして、関係者全員をひとところに集めて犯人を指摘する、定番のクライマックス。
限られた状況のなか、少ない証拠を駆使した推理で見事に伏線を回収する手腕はさすが。そして、一番の謎とも言える、頑ななまでに警察を呼ばない謎の答えも秀逸。
長いブランクにもかかわらず、学生アリスシリーズの雰囲気を壊すことなく、読み応えたっぷり。だけど500ページ超で2段組の長さを感じさせない。まさに城に入って出てくる、遊園地のアトラクションを堪能した感じの1冊である。
2007/10/14 asuka