26_Mの日記

Mの日記 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

Mの日記 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

きっぱり言おう、凡作である。
この話にサスペンスの要素は必要だったのだろうか。SMの描写も中途半端だし、エロティックな雰囲気さえ漂ってこない。主人公の心理描写もうまく表現しきれていない。そもそも、なぜ殺された妹の心理を知るために、犯人と疑うMに近寄るのか。なぜサド気質のMに傾倒していくのか。女ってそんなにも簡単に、支配されてしまう生き物なのか。さらに言えば、途中でMにそそのかされて犯人に仕立て上げて決別した恋人と、最後は元のさやに収まるのは、あまりにもご都合主義であろう。
サスペンス性、SM描写、エロティック性、普通の女性がマゾに変化していく心理描写、これらのどれかひとつを極めていれば、それなりに評価ができたかもしれない。もっと、もっと圧倒的な文章の上手さを持っていないと、料理しきれないプロットだったのだろう。

2007/09/18 asuka