23_インモラル

インモラル (ハヤカワ・ミステリ文庫)

インモラル (ハヤカワ・ミステリ文庫)

警察小説であり、リーガルであり、サービス満点のサスペンスである。タイトルから想像するほどのエロティシズムは感じることはない。事件の内容が内容だけに、もっとタイトルに近づける世界観をかもし出させてもよかったような気がする。
いわくありげな女子高生の失踪事件が物語の発端となる。容疑者逮捕までのテンポの良さ。逮捕後の裁判シーンへの展開の妙と、裁判シーンのテンポの良さ。裁判終盤に起こる意外な展開。その後の場面展開。そしてクライマックス。どれをとっても申し分ない上手さだ。小説として読ませるテクニックをこれでもかというほどに、見せつけてくれる。ぐいぐいと引き込まれる展開と流れるようなテンポの良さ。600ページを超える文庫が苦に感じないほどだ。
ただひとつだけ惜しいところは、事件の発端となる失踪事件を起こした女子高生レイチェルの魅力が書ききれていなかったこと。事件の全体像を見渡した時に、行き着くレイチェルという人物。なぜレイチェルを中心に事件が起こったのか。レイチェルのキャラクターを妖しげに、そして丁寧に書き込こんでいれば、もっとミステリとして完成されたと思うのだ。
映画のようなサスペンス性に富んでいるので、海外ミステリを読みなれていない人に、是非読んでもらいたい作品である。

2007/05/28 asuka