09_サイレン

サイレン

サイレン

「サイレンが鳴ったら外に出てはならない」
プレイステーションのホラーアドベンチャーゲーム「サイレン」が映画化された(監督は「トリック」の堤幸彦である)。その映画のノベライズである。この本を読もうと思わせたのは、映画「サイレン」を見たからに他ならない。ゲーム「サイレン」をプレイしたことがないので、ゲームの世界観を映画でどれだけ映しだしているかを楽しむことは出来なかったが、脚本を楽しむことは出来たと思っている。ただし、その脚本が良かったかといえば、「否」と言わざるを得ない。あまりにも劇中で張られた伏線を回収できていないのだ。限られた制作費と90分強の時間では、あれが精一杯だったのかも知れないが。謎をたくさん残した映画のノベライズなら、小説に真相を求めるのが心理と言うものではないだろうか。帯には「映画とは違うアナザーエンディングで描く小説版」とまで書かれている。
自分自身が勝手な期待をかけていたので、だれに文句を言えるわけではないが、読了後いささか幻滅してしまった。まさしくノベライズであり、映画をなぞっただけの小説だったからだ。伏線の回収もなされていなければ、アナザーエンディングの必要性も全く感じられない。これなら、よほど映画のエンディングに含まれていた、意味深な映像の方が納得させられる。エンドクレジットをよく見ていないとわかり難いのだが。
サイレンの謎、夜美島の謎、怪しげな登場人物の意味、人魚伝説の謎、劇中で取り上げた世界各地で起きた集団失踪事件の推理。
これらの謎が放置したままで終わる、映画と小説。読者自身に解読させるには、あまりにも少なすぎる手がかり。
映画と小説では不完全燃焼なので、ゲームをやらないといけないと言うことなのかもしれない。

2007/06/02 asuka