19_花崗岩の街

花崗岩の街 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

花崗岩の街 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

警察小説で行くのか、ハードボイルドで行くのか、中途半端になってしまっている分、全体的に間延びしてしまっているのが残念。テーマ性や社会性を盛り込んで、読み応えがあるのに、小説の途中で退屈させられてしまう。どちらかに的を絞れば、テンポが生まれて読みやすさが増すのではないだろうか。
最近のイギリスミステリに見られる、イギリス社会に蔓延る「闇」をテーマにする傾向。テーマは「幼児誘拐殺人」なのだが、犯人の動機や、犯人逮捕に至るまでのマスメディアの影響力、群衆心理などはしっかりと書き込まれている。重さを感じられなくもないが、P.Dジェームズのような重さには到達していない。また、ランキンの好敵手と帯で謳われているが、リーバス警部シリーズのような、小説としての面白さが、まだ追いついていない。リーバスシリーズの第1作の「紐と十字架」では少女誘拐事件が展開された。マクブライドが意識したかどうかは分からないが、本作でも幼児誘拐事件が展開されていている。同じテーマを扱ったためにランキンと比較されているが、まだまだ比較されるには修行が必要なのかもしれない。
ローガン・マクレイ部長刑事を主人公にした、アバディーンシリーズの第1作。今後のシリーズの展開に興味を引く、人物設定やエピソードがちりばめられている。既にイギリスでは、2作目が発表されているようだ。シリーズを積み重ねることで、小説の面白さをモノにできれば、化ける作家だと期待したい。

2007/02/18 asuka