16_血まみれの鷲

血まみれの鷲 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

血まみれの鷲 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

これはお薦め。警察小説のお手本のような作品だが、最後のひねりも効いていて、読み応えたっぷりだ。パズルを組み立てていくかのごとく、作中のキャラクターがこつこつと捜査して集めたピースを適所にあてはめていくと、事件の全体像が浮かび上がる。ただ、浮かび上がる全体像はピントがぼやけ、目を凝らしてみないとはっきりととらえることができない。かといって、目を凝らしてみてもいまいち焦点が定まらない。このジレンマがジャブのように最後のひねりに効果的に効いてくる。小説的な面白さを堪能できるだろう。
事件は、死者の両肩に、抉り取られた肺を置き、鷲の翼を模した娼婦の他殺体が発見されたところから始まる。既に同じ殺され方をした女性弁護士の事件を捜査していた、ハンブルク州警察の第一警視へe-mailでの挑戦状が届く。暗躍するマフィア、ヴァイキングの歴史、宗教的観点とボリューム満点。猟奇殺人がベースだが、サイコパスに縛られず捜査の緊張感を全面に感じることができる。

読み終えて、余韻にひたっている時に気がついたのだが、マイケル・スレイドの作品を思い出させる。最後のシーンなどもスレイド的だし。ラッセルはドイツの州警察、スレイドはカナダ警察のスペシャルX。舞台は違えど、面白さは保証する。

2007/01/17 asuka