13_死体絵画

死体絵画 (講談社文庫)

死体絵画 (講談社文庫)

最後の着地点が良かっただけに、途中の展開の仕方にもう少し切れが欲しかった。主人公である女性警部とテレビキャスターの心理戦に、盛り上がりを感じなかった。もっと、火花バチバチの直接対決でも良かったのではないだろうか。女と女の心理戦。それと、嫌味な上司との心理戦。八方塞に陥りそうな主人公。光は見出せるのか?と言ったストーリー建ての方が、読者が主人公へ入れ込みやすくなったはずだ。
事件の真相は、かなり社会派的なものだし、テーマも重い。この手の重いテーマの作品は好きだ。その着地の仕方も一筋縄では終わらせず、現代社会を象徴的に書き終着しているところは評価できる。この最後が書きたかったのだろうと、ストレートに思わせるのである。
ただ、死体に厚い化粧を施す理由づけが弱かったり、途中張っている伏線と思われる箇所を回収しきれていなかったり、とミステリ的には雑な感じを受けた。ドイツミステリ大賞を受賞したにしては、物足りなさを感じた。

翻訳がかなり読みづらい。特に会話における言葉遣い。もう少し口語的でも良かったのではないだろうか。ドイツ語の翻訳作品を読む機会が少ないので、比較できる物も無いのだが。

2006/05/22 asuka