05_看護婦への墓碑銘

看護婦への墓碑銘 (論創海外ミステリ)

看護婦への墓碑銘 (論創海外ミステリ)


仕事はできるけど人間的に、周りから嫌われるオールドミスの看護婦。その”負け犬”看護婦が幸せになるために打って出た奇策は、なんと患者を恐喝することだった。「あんた地獄に落ちるわよ!!」と言われたかどうかは分からないが、結局地獄に落ちる羽目に・・・。悪徳看護婦を地獄に突き落としたのは、だれか。という、あらすじの本格モノ。

幸薄い憎まれ看護婦が、恐喝者に成り下がっていくさまは読んでいて面白かったのだが、恐喝するネタが弱い。その弱いネタを元にすんなりお金を払ってしまう、被害者の葛藤を書いているのだが、これもまた弱い。想像がつくと思うが、強請られた人間が容疑者になっていくのだ。ただ、強請られるネタが弱い為に、殺人の動機という部分で押しが効かなくなっている。もっと悪徳看護婦を最低の人間にしたうえで、強請られるそれぞれの人間との対峙を書いていれば、後半の犯人探しがもう少し盛り上がったと思う。
巻頭の読書の栞には29作ものオーステン警部(のちに警視)シリーズあり、特徴として旅先で殺人事件に遭遇するパターンのようだ。レンデルのウェクスフォード警部のシリーズっぽっさを持っているので、もういくつか読んでみたい。クリスチアナ・ブランドの「はなれわざ」のような、隠しだまを持っていないとも限らないのだから。

2006/01/09 asuka