02_夢なき街の狩人

夢なき街の狩人 (創元推理文庫)

夢なき街の狩人 (創元推理文庫)

バードボイルドというよりも、現代版のウェスタンな作品。
小さな田舎町。よそ者の正義漢。口の減らない陽気な相棒。街を牛耳る悪者権力者。迫力の体躯なボディーガード。いきがるチンピラ。なにかと首を突っ込みたがる街の小娘。協力的な保安官。悪者権力者と繋がっている保安官助手。知恵のはたらく悪徳弁護士。etcそうそうたるメンバーである。
事件といえば、麻薬とお金と権力。そして、よそ者正義漢と悪徳権力者との決闘。話の骨組みがウェスタン調なのだ。もちろん正義が勝って一件落着。

人物が主人公だけでなく脇役にいたるまで、しっかりと書かれている。アクション色の強い作品は主人公にだけにスポットが当てられがちだが、まんべんなくキャラクターが付けられている。読んでいて登場人物一人一人をイメージしやすい。それに加え、相関図も分かりやすいので、小説の世界に入っていくことが苦にならないのである。
冒頭のアクションシーンで、いきなり緊張感を高められ、序盤で生まれる謎。中盤ではすんなりと謎が解けていき、最後は決着をつけるための決闘へと盛り上がっていく。ストーリーが映画的に展開されるので長さを感じずに、読める作品である。

原題の「DREAMSICLE」とは作中に登場する新種の麻薬なのだが、それについてもう少し言及できていると、ミステリ要素が膨らんだ気もする。そこだけが心残り。


2005/12/22 asuka