01_夜明けのフロスト

夜明けのフロスト (光文社文庫)

夜明けのフロスト (光文社文庫)

雑誌「ジャーロ」に収録された、クリスマスを題材としたミステリのアンソロジー
表題作のフロスト警部をはじめ、ダルジール警視、ダイヤモンド警部などおなじみのキャラクターが登場。7人のミステリ作家がおくるクリスマスプレゼント。

・「クリスマスツリー殺人事件」エドワード・D・ホック
ホックの上手さが光る、本格短編。
クリスマスツリーを積んだ赤いピックアップトラックの運転手が、短時間で次々と殺されるという30年前の事件を追うことになったレオポルド警部。
ちょっと気にしていれば、すぐに真相に行き着くのだが、ミッシングリンクをこのページ数で読ませる手腕はさすが。

・「Dr.カウチ大統領を救う」ナンシー・ピカード
Dr.カウチが孫娘に語る、思い出話。
Dr.カウチと孫娘のやり取りに心が温まる。それだけ。
いまいち、ミステリとしてはピンと来なかった。

・「あの子は誰なの?」ダグ・ダリアン
片田舎にふらりと現れた若い海兵隊員。彼はあるリストの中から本当の父親を探しているというのだが。そのリストに載っていた一人が殺されてしまう。
動機の消去法で犯人を追い詰める。謎の海兵隊員の使い方が絶妙。

・「お宝の猿」レジナルド・ヒル
ご存知、ダルジール物。盗まれた猿をかたどった黄金像。たれこみ屋の情報から、ダルジール警視が行動にでる。
7編の中では一番クリスマス色が強かった気がする。
上手いところに隠したものである。ダルジールも上手いこと見つけたものだ。猿を見つけるだけでなく、いろんな物を見つけるのが、ダルジール流。

・「わかちあう季節」マーシャ・マラー&ビル・プロンジーニ
名無しの探偵の登場だ。今回はウルフと言う名で登場している。
自分のためのクリスマスプレゼントを取りにいった部屋で、鉢合わせした怪しげな男。よく部屋を調べてみると機密事項が保存されたフロッピが消えていた。
ひねりがもう少し欲しかった。どう考えてもそこしかないだろうってところに隠したじゃ、平凡すぎる。

・「殺しのくちづけ」ピーター・ラヴゼイ
ダイヤモンド警部がクリスマスのニューヨークでひと働き。
ハウダニットが上手くはまっている。そりゃ、ミニスカートはいてはしごに上られたら、男なら見ない奴はいませんって。

・「夜明けのフロスト」R・D・ウィングフィールド
クリスマスにくりひろげられる、誘拐、強盗、行方不明、殺人。フロストをはじめデントン警察署のメンバーに平穏なクリスマスは訪れない。
フロスト警部シリーズのどたばたぶりを堪能。どたばたしながら、それぞれの事件が融合していき、張られた伏線の回収といい、着地の仕方は短いから余計に綺麗に見える。どたばたのオチもストライク。
はやく、新刊出ないかなぁ・・・。


本格テイスト満載のアンソロジー。クリスマスに特化しているものの、季節を気にせず読んで欲しい一冊である。