19_奇面館の殺人

奇面館の殺人 (講談社ノベルス)

奇面館の殺人 (講談社ノベルス)

仮面が支配する「館」奇面館。そこに招待された6人の男たち。主人の意向によって、犯人の意思によって装着させられる、異様な仮面。季節外れの雪に閉ざされ、「吹雪の山荘」状態のなか、奇面館に現れる凄惨な死体。装着された仮面で各々の顔が見えない中、着実に、確実に推理を進めていく名探偵・鹿谷門実。この異様な状況は、偶然なのか、必然なのか。

読後に沸き起こったのは、「懐かしさ」。「そう、本格ミステリってこういうのだよなぁ・・・」と素直に関心したとともに、冊数を重ねた綾辻の「館」シリーズで感じるとは思っても見なかった。『暗黒館の殺人』で味わった8年前の感覚が、自分の中で「館」シリーズに植えつけられていて、当時の衝撃の大きさを改めて思い出させる。綾辻自信が、「"遊び"に徹した軽やかなパズラーを」と本作に望む意気込みを語っているが、読者としてもデビューからの綾辻作品(「館」シリーズに閉じてしまっても問題ないと思うが)を読み続けていれば、経験と知識が、どこかにきっとっと言う猜疑心が生まれる。その猜疑心の中、淡々と本格ミステリの筋を外すことない、ストーリー展開と、王道とも言える探偵役の謎解きと大団円を迎えることで、図らずも本格ミステリ本来の楽しさを見出すことができる。どこかにきっとの猜疑心は最後の最後まで継続され、解決していないにもかかわらず、「館」シリーズの1作を読了した満足感がそこにある。謎を解くという原点回帰とは、きっとこういうことなのだ。
「館」シリーズも10作中9作目まで到達した。綾辻曰く「全体に大きな仕掛けやオチがあるようなシリーズ構成ではない」とのこと。10作目は肩肘張らずに、気楽に落成を待ちたい気持ちにさせられた。

2012/1/30 asuka